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ストーリーズ

今までは動植物との会話を中心にブログを書いてきましたが、これからはそれらと違うタイプの様々な話をいくつかのブログに分けて載せて行く事にしました。今後載せる話はものにもよりますが、別世界で自分が実際に体験したり見聞きしたものもあります。ここに載せるのは主に私が作った物語が中心ですが、中には別世界含め実話もあります。

         ショート・ショート
 物質縮小装置
「ようし、これで完成だ。思ったより簡単に出来たな」春平がそうつぶやいたとき「ねぇ~あなた~、まーだー?出発日今日よ、早くしないと間に合わなくなるわよ~」実験室の外からまゆりの大きな声が聞えてきた。
実験室を出た春平の手には小型の携帯電話のようなものが握られていた。
春平は物理学の学者で、めがねをかけ細身で少し神経質そうな繊細な青年だった。待たせたね、やっと完成したよ」とまゆりにいった。細身の春平に対してまゆりはふくよかを少々通り越した体型で、性格もせっかちだった。「へーこれが物質縮小装置?携帯電話みた~い」といってまゆりは装置を手に取った「思ったより軽いのね「見た目で疑われないように携帯電話に似せたんだよ。物質縮小装置の機能とは、全物質の体積を…」と春平が説明を始めると、まゆりは首を振って装置を春平に返し「私は詳しいことはどうでもいいのよ。新婚旅行にいければそれでいいのといった。実はまゆりと春平は新婚なのだが、貧乏学者の春平は新婚旅行に行くお金がなく、一人分の予算で新婚旅行に行こうというまゆりの提案で“物質縮小装置”を完成させたのだった。
「これちゃんと使えるの?」「もちろん」と春平は自信に満ちた口調でいい、ラットを一匹ケージから取り出し、物質縮小装置を向け照射した。ラットは見る見る小さくなり、110ほどの大きさになった。しかし大きさは変化したものの、動きなどに問題はなさそうで急に大きくなったエサを苦労しながら食べていた。安全なの?」「心配ないよ。何度もテスト済みさ。大きさは変わっても体や精神には何の影響もない。食事も通常通り食べられるよ。何の危険性もない」というと、まゆりをじっと見つめ「大事なまゆりのためだもの、危険なものなんか作るわけないだろ」「あなた…」二人の間に温かな空気が広がった。
まゆりがほおを染めて「使い方は?」と聞くと「縮小するときは矢印を小にして照射し、元に戻すときは大にして照射するんだ。サイズはすでに設定してあるから、自動的に決まった大きさになる」といいながら、ラットを元の大きさに戻した。「じゃあ、早速新婚旅行に出発しなきゃ」といってまゆりは、すでに準備の終わっている荷物を持ち、物質縮小装置の前に立った。春平は、まゆりを縮小してポケットに入れて新婚旅行に出かける予定だった。しかし無事に縮小されたまゆりを前に、春平はじっと動かなくなってしまった「どうしたの?なにぐずぐずしているの?早く行きましょうよ…」まゆりの声も春平には届かなかった。“確かに物質の縮小はできた。だが重量のことは考えていなかった。重量軽減装置を完成させなければ。しかし重量軽減装置は簡単には作れない。数十年はかかるな。それまで新婚旅行は…”2008.9.29(MON)

動物実験廃止法成立」

新聞記事

20XX年、動物実験反対論者たちの活動が認められ動物実験に替わる方法として、動物実験反対論者全員を実験に使用する“動物実験反対論者実験法”が制定された。と、同時に動物実験完全廃止法が成立した。

この法律を制定するに当たっては動物実験反対論者が、世界中の動物実験関連施設に“動物を実験に使用するよりも、自分たち動物実験反対論者を実験に使用すべきだ”と土下座をして回り〔土下座法案〕とよばれた。反対者は多数いたが、やがて動物実験反対論者の強い意思に沿い “動物が解放できる,実験の結果が早く出る,直接感想を聞ける”といった実用性をも考慮して、世界中の人々の支持を得て決定された。
この法案制定に当たっては、幼児や重傷病者その他医師の診断上審議不能者を除いた、全人類による投票が行われた。無論この法案の利点や問題点などは、全人類に徹底的に公正に説明が繰り返されたことは言うまでもない。

動物実験反対論者の中には一部、自分たちではなく死刑囚を使ったらどうかなどと言うものもいたが、同じ動物実験反対論者から“恥知らず!裏切り者”“我々の顔に泥を塗る気か!!”などという激しい非難を浴びた。死刑囚からも“我々を実験に使うとはどういう了見だ!我々は、お前たち【実験用人間】とは違う。それを実験台になれとは、お前らはネロか!”と猛抗議が起った。既にこの頃は動物実験反対論者は【実験用人間】という意識を持つ人たちも少なくなかった。世論も死刑囚を実験に使用するなどということは、本人たちの意思に背き動物実験以上の残酷性を持つことを十分に理解しており、そのような非人道的なことは論議もされることはなかった。

 

(当時のトピックス)“動物実験反対論者実験法”成立時の書き込み版
“動物実験反対論者実験法は、誰もが動物実験に心を痛めることがなくなるという、世界中の人々の共通の願いが満たされます。まさに完璧な夢の実現です”この一文によりこの法案は“パーフェクト・ドリーム法”とよばれるようになった。

動物実験反対論者に行われたインタビュー“今まで生きてきた中で一番幸せかもしれない”“自分で自分をほめてやるぜ”“(動物実験反対論争が)終わった。何もかも…”

実験従事者へのインタビュー “パーフェクト・ドリーム法はまさに夢の実現。これで実験用動物たちに抱いていた苦しみを感じなくて済む。気持ちよく眠れる”“チョーサイコー気持ちイー”“パーフェクト・ドリーム法は栄光への架け橋です”

(訂正)実験従事者へのインタビュー記事に一部間違いがありました。“パーフェクト・ドリーム法は栄光への架け橋です”と記載いたしましたが、実際は“パーフェクト・ドリーム法は(結果が出るのが早いので)成功への駆け足です”とのことでした。 

XXX年現在、パーフェクト・ドリーム法が制定されてから数百年経た現在も、全生体実験は動物実験反対論者の子孫を使用しており、何の問題もなく平和が続いている。

 動物実験反対論者の方々、早くこういう平和な日々が来ることを祈っています。2008.10.10(FRI)
  
          ドラマ
バタフライ・ストームをあなたに(うじ虫が一匹死ねばその10倍の人が喜ぶ)
あらすじ:暴走族の卵の一人が事故を起こして死んだことがきっかけで、暴走族撲滅運動が起こり、暴走族を始め社会に迷惑をかける若者たちが排除される。 (本当はTVドラマ化できないかと思っていた作品のため脚本的な書き方になっている)

いつもと変わらぬ静かな町の朝の風景。しかし夜になると暴走族が進出してきたため騒音などで迷惑をこうむっている。病気の奥さんを抱えた男性は怒って家から飛び出し「うるさい!」と怒鳴る。受験勉強中の人たちは勉強に集中できない。夜、町を歩く女性は危険にさらされる。

 

ある日自転車に乗った女性が青信号を渡ろうとすると、後ろに女を乗せた暴走族の卵(A)がバイクで信号を無視して突っ込んできて、バイクをよけた女性は転倒して足に大怪我を負う。バイクは走ってきたトラックに激突する。トラックは横転する。バイクの後ろに乗っていた女は振り飛ばされ、怪我をする。

自転車の女性はトラック運転手が動けるのを見て、足を引きずりながら助けに行く。Aは下半身がトラックの下敷きになって身動きしない。女性はトラック運転手を助けたが、Aを助けに行かず暴走族の女が「助けてくれ」と懇願しても「うじ虫が一匹死ねばその10倍の人が喜ぶ」と言い放つ。

女性は騒ぎを聞きつけて駆けつけた人々にも「ガソリンが漏れていて危ない」と大声で危険を知らせ、誰もAを助けにいかなかった。

Aは死に、暴走族の女は病院で女性が言った言葉を非難し「人殺し」と叫びまくる。Aの両親がそれを聞き女性を告訴するが、世論は暴走族排除の意識から誰も女性の行為を批判的に捉える風潮はない。女性は自損事故といわれ保険金もなかった。怪我の程度は医師の診察により女性のほうが暴走族の女よりも重傷だったことが確認された。それらのことがますます女性に対して好意的な世論になっていった。

マスコミも女性の行為を好意的に扱い、暴走族始め社会に問題を生じる若者たちへの攻撃に利用した。

 

Aの両親は息子が暴走族の一員ということで、世間から冷たい目で見られるようになり、父親は会社で左遷される。父親「なぜです?」上司「取引先の社長の息子さんが今年大学受験なんだよ。暴走族のせいで勉強がはかどらないそうなんだ…」そう言うと背中を向ける。

父親は退職した。                                                                                        

警察も相手にせず、やむを得ないことだというのみ。しぶしぶ帰ろうとする両親の後ろから聞こえたのは警察責任者の「おい!被害者(・・・)の女性の家の近くにうじ(・・)(・)どもが集まり出したそうだ!これ以上被害者に被害を及ぼさせるな!すぐ行って追っ払え!」警察官が2人はい!すぐさま走った。ふと目のった警察責任者と両親。しかし警察責任者は“ふん!”というまなざしのみ。

父親は妻にあきらめるよう説得するが母親はあきらめきれない。父親は暴走族の実態を調べはじめる。(暴走族の実態描写フィルム使用)

裁判でもトラック運転手の「女性が脚から血を流し、びっこをひきながら助けてくれた」という証言や救急隊員からの「やむを得ない時は助かる確率の高いほうを優先する」との証言もある。また救助に駆けつけた人たちも「ガソリンが漏れてて危ない(爆発の可能性がある)といわれて気づいた」と証言した。暴走族の女は検事や世論から「あなたのほうが怪我が軽かったのになぜ自分で助けに行かなかったのですか!」などと、やり玉に挙げられて泣くしかなかった。いつの間にか大人しく引っ込んでしまった。

やがて人々が暴走族を始め社会に迷惑をかける若者の行為を自分たちの手で排除する動きが強まっていき、暴走族が窮地へと追いやられていく。(暴走族が集まる広場に花火を仕掛けたり、自分たちの町の道路に幾人もの人たちが互いに腕を組んで立ち、道を通れなくしたりなど様々な反撃が起こる)

 

裁判最終日。裁判所の入り口に向かう女性の前に母親が現れる。母親「なぜこうなったの?」女性「“バタフライ・ストーム”てご存知?一匹の蝶の羽ばたきが嵐を呼ぶそうよ」母親「…」

女性は足を引きずりながら裁判所へ向かう。2008.10.1(WED)

悪魔の歯軋り(ミライ…ノヒ…ト…タチヲ……スクッ…テ…)(アニメ化したかった作品)

「あっはっはっはっは」「そうですよ。そうでなくっちゃ」「あらあら、にぎやかね「本当にお父さんは愉快な方だ」あなたこそ負けてないわよ」

一人の女性がいた。女性には婚約者がいて、大学の卒業と同時に結婚する予定の幸せな日々を送っていた。今日は婚約者が家に遊びに来ていた。

「ところで君、動物実験に反対するのはやめてくれんかね。私も動物実験の必要性は痛感しているんだがね出来ませんね。例えお父さんの言葉でもそればかりはお断りします」「そうか…仕方ないな「いつも動物実験のことでは意見が分かれるわね」

娘の父親は医者で、難病治療の研究をしていた。婚約者はIT関連会社の社長の息子で、動物実験反対論者だった。そのため女性の父親と意見がぶつかることもしばしばだった。
「そんなこと言っていたら動物たちがいなくなってしまいます!犬の苦しみをもっと考えてやってください「しかしだね君!病気で苦しんでいる人たちから希望を奪ってどうする気だね!!」「犬だって生きる権利はあるはずです!「われわれ人類はもっと楽になりたがっている。病気の苦しみからも解放されたがっている!そのためには動物実験が必要不可欠なのがわからんのかね!」
以前は激しく言い争った事もあった。
「つい、興奮しすぎてしまいまして「ホント、2人とも頑固なんだから」ほほほほほ はっはっはっはっ

そんな平和なある日、娘が「少し熱っぽい」と母親に言った。母親は「風邪かしら?」と軽い気持ちだった。しかし熱はだんだんひどくなり父親の病院に運ばれる。検査の結果、父親の下した診断は恐るべきものだった。
診断結果…それは「悪魔の歯軋り」
とよばれる難病中の難病だった。

娘は専門病院の隔離病棟で過ごすことになるが自殺防止のため口にガードが取り付けられ、声を出すことも話すこともできなくされた。

婚約者は会う事を許されず、母親は毎日姿を変え続ける娘の様子に耐え切れず、難病治療の研究者である夫を責める。

「何とかしてください。あの子がかわいそう過ぎます「分かっている。だが方法がないそんな。あなたはこの病気の研究者でしょう!すぐにでも治療薬を作ってください。なんなら私の血を差し上げます無理だ…」原因も不明で治療法が確立していなかった。対症療法も効果はなかった。

やがて母親は毎日、姿を変え続け苦しむ娘に安楽死を求めるようになる。「あの子のためです。お願いします」「あの子は死にたがっています。私には分かる。あんな姿になって苦しみながら生き続けていて何の意味があるんです!」「私もあの子を楽にしてやりたいのは山々だ。だが悪魔の歯軋りはまだ研究途中なんだ。そのために一人でも多くの患者を生かし続ける必要があるんだ。今後の研究のため必要な措置なんだそんな」「あの子は実験動物ではありません。人間です。人間としての尊厳があるはずです」「分かっている。私だってつらいんだ。自分の子どもが長年研究し続けてきた難病に罹るなんて…」バタン。妻は部屋を出ていった。父親は自分が長年研究し続けてきた病気ゆえに患者の苦しみがわかっていた。だが治療法が確立していない現段階ではどうする事も出来ずただ観察する以外手立てがなかった。よりによって自分の娘があんなむごい病気になるなんて…なんて運命は残酷なんだ…

コトッ「ありが…」「…」バタン。お茶をおくと何も言わずに夫のそばを離れる妻。温かかった家の雰囲気が一変し冷たい風が吹きすさぶようだった。

 

「予定通りか」「えぇ、あの施設は特にセキュリティは厳しくありません。潜入さえ出来れば後はこっちのものです」では始めよう」婚約者は何も知らないまま、以前から計画中だった“研究機関の実験動物一斉救出計画”を実行する。研究所はもとより飼育会社の動物までも大量に逃がしてしまった。

「きゃー誰か来てー。エバックに入らないでー」「犬が逃げたー。捕まえてくれー」ワンワン。キャンキャン「きゃー、ラットたちに何するんですかー」「やめてー!実験中のうさぎたちなのよー」「コンベに土足で入るなー」「そこはSPFだぞー!!」「君たち何をしているんですか!ここにいるのは全て実験に必要な動物たちなんですよ!!」「わかっているさ。だからこうやって解放してやっているのさ。生贄にされないうちにね」「そら行けーみんな逃げろーー」

研究所のデータ保管機能もめちゃくちゃにされた。コンピューターを破壊され書類まで焼かれた…

「何てことだ」娘の父親は報告を聞いて呆然とした。「何もかも台無しだ…」実験動物を大量に逃がしたことで一部メディアでは英雄扱いされ、得意げにインタビューに応じている実験動物解放団を映すTVを睨みつける。

襲われてデータを破壊された研究機関の中には“悪魔の歯軋り”の治療法確立の研究を行なっている研究所もあった。娘の父親が長年研究を進めてきていた最中だった。そしてその研究成果が、あともう少しで治療薬の確立に成功しかけていた。あと一歩研究が進めば臨床試験にまでこぎつけていた。だが…実験中の実験動物も実験に使用可能な動物も全ていなくなってしまい、実験データも破壊されたために研究が完全に中断してしまった。無論特殊な病気なので様々な点で通常よりも準備も予算も必要だった。それらが全て失われてしまった…

 

リーン、リーン「はい、君か。あぁTVで見たよ。なんて事をしてくれたんだ。われわれの成果が台無しだ」「あなたが研究を委託している機関とは知らなかったんです。しかしわれわれは間違ったことはしていませんよそういう問題ではない」「…」「…」二言三言話し合った。

数日後、婚約者は病院でフィアンセに会うことが許された。病院へ行った婚約者は戸惑った。“隔離病棟”“最重症患者室”“そんなに悪いのか?”病室に通された婚約者は驚いた。彼女がいた…だが彼女がいなかった…

そこにいたのは…誰だかとも人ともわからぬ相手だった。呆然とする婚約者に「君に見せたくはなかった」「こんな娘の姿。誰の眼にも触れさせたくはなかった…」父親の手は硬く握り締められ、血の気が失せ真っ白になっていた「娘がどうしても君に言っておきたいことがあるといって」「君が実験動物を逃がしたことを知って、死ぬ前にどうしても会っておきたいというもので許可した「死ぬ?一体何が…「悪魔の歯軋りだよ。君が逃がした実験動物たちがいればあと一歩で臨床試験にまでこぎつけられたのに」「成果が出ればすぐにでも娘に飲ませたかった…」「例え間に合わなくとも可能性だけはあったのに…」婚約者はショックを隠し切れなかった。考えもしなかった。目の前で自分が愛した人が死んでいくのを止める方法を自らのエゴで潰してしまったなんて…「娘が君を呼んでいる」口を聞くことができなくされている状態の娘の目で言いたい事が分かった。娘が最期に残した言葉は
「ミライ…ノヒ…ト…タチヲ……スクッ…テ…」「ミライ…ノヒトタ…チ…ノ…クルシ…ミ…ナイ…ヨ…ウ…ニ…シテ……」(目線使用によるパソコン表記)

“悪魔の歯軋り”とは「全身の関節が末端部位から破壊され、変形していく難病中の難病。現在治 療法はない。関節は異常な形に音を立てて崩れて変形するうえにすさまじい激痛が伴うため患者は発作が起るとすさまじい悲鳴を上げる。通常夜間に発作が起こることが多い。その発作時の音や悲鳴から“悪魔の歯軋り”と名づけられた。

 通常発症から数ヶ月で呼吸器官や内臓の損壊,神経切断などで死に至る。しかし全身の関節が変形し破壊されてい  くにもかかわらず、脳や精神への異常は生じないため死ぬまで苦痛や恐怖に付きまとわれる。“地獄の拷問”と呼ばれる恐怖の難病」

この物語はフィクションであり、登場人物・団体名・病名・病状全て架空のもので実在のものとは一切関わりはありません。
2008.10.11(SAT)

 
「ニュー・スター・ワン」(ルパン三世で作品化して欲しいと思った作品)
    ニュー・スター・ワン 息子 じいさん
は“ミニカー博物館”から一台のミニカーを盗み出した。「こんなもんの中に何が隠されてるってんだ「パラダイスへの入り口だとよ」パラダイス?」「何でもとんでもない車の秘密が隠されているらしい」Aはそのミニカーに仕込まれた3Dから、そのミニカーを作った天才自動車屋の爺さんの話を聞いた。
爺さんはそのミニカーに「ニュー・スター・ワン」という天才コンピューターカーの情報を隠していた。
3Dの爺さんは「“ニュー・スター・ワン”は通常の最高時速は人が歩く速度、最低時速はカタツムリの歩く速度。エンジン音も振動も一切なく、どんながたがた道でもへっちゃらさ。おまけにどんな坂道でも車内は常に平行だ。プライドが高く、気に入らない相手は乗せない。しかし気に入られれば“ニュー・スター・ワン”の中はパラダイスじゃよ。どんな美女とでも、いつでも何でもできる夢の世界さ」と笑う。「“どんな美女とでも、いつでも何でもできる”ぅ」「うをぉほっほっニュー・スター・ワンに気に入られれば、仕込まれたコンピューターが脳波を感知して、どんな美女でも映し出しとくれるわい。おまけにいいタイミングで酒でもベッドでも何でも出しとくれるわい。理想の美女たちと好き放題やり放題じゃよ。グラマーでもパツキンでもな「それってじいさんの趣味?」「うをぉっほっほっほ「言ってくれるよ」「残念ながらわしは、亡き女房に忠誠を誓った身じゃがな」「それにじゃな必要とあればあるキーワードを言うと“498.9km”が最高速度になるぞぃ「なーんで500kmにしないんだ~?」「わしが四苦八苦(4989)して作ったからさ。わっはっは」
ガクッ「ただしそのキーワードを言うと止まった直後に車外に放り出されて二度とは乗れんから注意するこった」片目をつむって、指をチッチッチッ「まぁ、せいぜいがんばるこった「ちょっちょーと待ってくれ。なーんで500km近くまで出せるスーパーカーの通常の最高速度が人の歩く速さで最低速度がカタツムリなんだー「うぉっほっほっほっお前さん、美女とのお楽しみを早く終わらせたいのかね」「あぁそれはそうと、あいつあぁ見えて結構繊細なんじゃよ。女はデリケートに扱わんとな」(ひそかに耳打ち)「まだうぶじゃからな」ウインク。じいさんは消えた。
「ニュー・スター・ワン」はヨーロッパのある山間の国で、他の高級車と共にオークションに出されるため、世界的車泥棒のアラブの大金持ちがそのオークションに出される高級車を狙っていることを知ったAたちは「ニュー・スター・ワン」を手に入れることを目的にオークション会場に行った。そこでAたちはニュー・スター・ワンの手厳しさを知った。初めはAを追いかけることに命を懸けている警部だった。警部を一目見たニュー・スター・ワンは「顔が悪い」の一言で無視。「女は乗せない「なーによ。あんただって女じゃない」「私はあなたとは違いまするわ」は乗るには乗ったが「今はやりの映画俳優は?」「最近流行のファッションカラーは?」「昨日から公開された映画のタイトルは?」等の車内での最新物の質問についてゆけず「う、う~む…」「そういえば宿の窓から看板が見えたような…」ホテルの隣は映画館で、人気映画俳優の出演映画が公開されたばかりだった「面白くない人。若い女にもてないわね」とポイ。Bは「タバコを吸う人は大っ嫌い」と見向きもされなかった。Aは「失礼」と初めはドアが閉まりかかったがなんとか取り入って試乗が許された。外にでたAとニュー・スター・ワン。ニュー・スター・ワンの速度は人の歩く速度と同じだった。
「ちー、おれとのデート早く切り上げたいらしいや」「ちょいと横道入ってくんないか」「嫌でございます。ボディが汚れたらどうしてくださいますの」「なーにがボディだい。洗やいいだろうが」思わずつぶやいた。「あなたに質問がございます」「ああ、何なりとどうぞ」Aは車内で質問に答え続けた。「第1000問:浮気は絶対しない?」無論Aは「しーない。しない。浮気なんて絶ー対ありえないよ」と調子よく答えた。ニュー・スター・ワンが「あなたを認めます」といい、その答えにほっとしたAの目に飛びっきりの美女の姿が映った。思わず美女に見とれたAはとたんに車の外に放り出された。そしてAの顔に一枚の紙が舞い降りてきた。そこには「なになに“あなたの浮気度は1000%さっきの美女は90才の老婆の16才当時のものです”ぅ」見ると確かにそこには老婆が立っていた。
ニュー・スター・ワンは本当は自分を作った人の息子に恋していたが、その息子には長年連れ添った“古女房”がいた。Aがその息子に「お前さんの親父さんがニュー・スター・ワン作ったんだろ。どうして冷たいんだい」と聞くと「あいつは誰からも大事にされすぎていておれなんか相手にしてくれないよ」「おれにはこいつがちょうどいいのさ」と言いながら古女房のボディを磨いていた。ニュー・スター・ワンは誰からも大切に扱われることで彼に嫌われていると思い、自分の思いを告げることができなかった。落ち込むニュー・スター・ワン。Aたちはこっそりそのことを盗み見てしまった。
その夜、車泥棒のアラブの大金持ちの一味が高級車を大量に盗み出したが、ニュー・スター・ワンだけは盗めなかった。盗まれた高級車の中に“古女房”も入っていたため、車の持ち主が取り戻しに向かった。盗まれた車は全て輸送船に積まれていた。Aたちも盗まれた車を取り戻しにニュー・スター・ワンに乗って港へ向かった。しかしニュー・スター・ワンの最高時速は人の歩くスピード。間に合うわけがなかった。Aは必死に498.9kmのキーワードを探った。しかし「きれい」「がんばれ」などいくら言っても「当たり前でございましょ」「これが最高時速でございますわよ」などと言われキーワードに該当しなかった。とうとう頭に来たAは「かっこつけてんじゃないよー機械ヤロウ!!といった。そのとたんニュー・スター・ワンは「なんですってー!!とヒステリックに叫び停車した。そして戸惑うAたちの耳に今まで聞いたことのないニュー・スター・ワンのエンジン音と感じたことのない振動が伝わってきた。ニュー・スター・ワンは「機械をバカにするんじゃないわよ!!」
と怒鳴るといきなり超最高時速でぶっ飛ばし、道をそれ急斜面のがけのような山を登り始めた。「うわ~~」「おい、どんな斜面でも平行を保つんじゃなかったのか!「女は怒らせると怖い」「むねがつぶれちゃう~」Aたちは急斜面に体が傾き押しつぶされそうなGで顔がぺしゃんこ。おまけにすごい振動で目がぐるぐる。ニュー・スター・ワンは今まで絶対見せたことのないほど、泥まみれになり木にボディをぶつけながら超最高速度で山の中を突っ走った。

画面チェンジ
のどかな港で猿が一匹バナナを盗み海の見えるがけっぷちの草むらに戻り仲間のサルに盗んだバナナを渡し二匹で食べようとした。その猿の後ろの草むらからがさがさと音がしたと思ったら ブォォォ~ン ニュー・スター・ワンが飛び出してきてそのまま海へとジャ~ンプ…「ウー」猿が互いに抱きつくのは当然。そのまま海へと90°にまっさかさま…「うわ~~」ところが…海面すれすれで航行してきた船に着地。輸送船が港を出る前に飛び乗った。Aたちは船の上で車外に放り出された。船の上で銃撃戦が起き、ニュー・スター・ワンも敵と戦い傷ついた。Aたちがニュー・スター・ワンを探したとき、ニュー・スター・ワンは敵のボスの背中に乗っかり「なーにすんのよ」「あたしの大事な人いじめるの許さないからね」と言いながらジャンプの繰り返し。敵はぐったり。Aが「もうそれくらいにしてやれ。死んじまうぞ」と言ってやっとやめた。Aたちは捕らわれていた息子を助け出し“古女房”を含めて、盗まれた車を全て取り戻した。港では警部のとっつぁんが待っていた。しかしニュー・スター・ワンは恋した相手が“古女房”との再会を大喜びしていることと、自分が泥だらけの傷だらけで“ブス”になったことでがっくりと落ち込んで一人船を去った。カンカラカンカンカン。タイヤのホイールが外れた…
 
翌日Aたちが街を去ろうとしているとき「お~い」ニュー・スター・ワンが後ろからやってきた。だが以前のニュー・スター・ワンとは全く違ってパステルピンクに塗り替えられていた。乗っていたのはあの息子だった。息子はAたちに「“古女房”が壊れちゃって、修理不能だからこいつと再婚した」見るとフロントガラスには“古女房”の写真が飾られていた。「うっふ~ん」息子の隣には女も真っ青なグラマーな金髪美女…「じゃ」息子は窓を閉めた。「なーんかむかつく(女)しょーがねぇんじゃねぇーの。古女房に死なれちゃ」(B)拙者もあのような美女と…う…ウン(言わずと「あれがパラダイス美女…」(A)。息子は隣の美女と熱烈に抱き合った。(窓の外からは完全に見えない)閉めきられたニュー・スター・ワンの中では風もないのになぜか“古女房”の写真が後ろを向いた。2008.10.17
(FRI)

見られる!(ベー人形キャスター)
(フジTVの「世にも奇妙な物語」に投稿したかった作品)
あるTV局の人気キャスターがある日を境に、周りの人々の心の中が「顔の書かれた風船が頭上についているように」見えるようになった。人の心がそのままイラストのように書かれた風船が頭の上にフワフワと浮いているように見え出した。そして心の変化もそのままイラストが変るように移り変わった。
そのTV局関係者の間では人の心がそのように見えるということを“べー人形”と呼ぶうわさが以前からあった。ニュースキャスターは初めは戸惑ったが、次第に面白がり出した。
自分は他人の心の中が“見られる!”と優越感に浸りだした。
しかしやがて他人に自分の心が“見られる!”ようになる。TVスタッフだけではなく、TVを見ている人たちにまで…本人だけはそれに気付いていない…2008.11.16(SUN)


      ストーリーズ
ミトコンドリア銃
ある街で奇妙な死に方をする人たちが続出した。死んだ人々の共通の特徴は、体の内側が炭のように炭化していることだった。しかし医者も経験のないことで全く原因がわからなかった。

「悪くないが、重いな」男が言った。「それにこいつは一度しか使えんのが不便だな。エネルギーの充填に時間がかかりすぎる」“こいつ”とは『ミトコンドリア銃』のことだった。ある軍の秘密組織が『ミトコンドリア銃』を開発した。

 ミトコンドリア銃とは動物の細胞内に寄生している“ミトコンドリア”という微生物の発熱作用を異常活性化させることにより、その燃焼力を利用して銃を照射された相手の体を内側から炭化させて殺すというものだった。 その実験で街の人々が無差別に殺された。2008.10.3(FRI)

へそ 家の住人
ある日男が一軒の小さな家の前を通りかかった。男はその家の門が開いているのに気付き中に入った。ドアを開け中に入ると一人の男がいた。その男のいたのはその家の真ん中の部屋だった。その家の住人は男に「こっちだ」といって真ん中の部屋の三つのドアの前に立ち、男の前でドアを開けた。そして中へ入るように促した。そこには現実とは思えない奇妙な世界が広がっていた。三つのドアをそれぞれ開け中へ入らせると、住人は入ってきた男を「こっちだ」といって別の部屋へ案内した。男はついて行った。「お前の部屋はここだ。用があるときはベルを鳴らせ。ここに入ったからは外へは出られない。しかしお前はここで暮らすようになったからには覚悟しておけ「なに?」バタン。
その日からその男はその家で暮らすようになった。入ってきたドアはなくなった。その家は男が暮らすようになった部屋から一本の廊下が出ていて真ん中の部屋に続いていた。その家の住人がどこにいるかは全く分からなかった。しかしその家の住人は男がベルを鳴らすとすぐに現れた。必要なものは全ていえばそろえてくれた。その家には窓はなかった。明かりもなかった。しかしなぜか明るかった。男は何もすることがなくて退屈のあまりその家の真ん中の部屋へ行き、三つのドアのどれかを開け、中へ入っていった。ドアの向こうにはけして現実にはありえない奇妙な世界が広がっていた。そしてそれは毎回、そしてドアごとに異なっていた。ドアを開け中へ入って出て閉めて、またすぐ同じドアを開けても異なる世界が広がっていた。その家の住人は男がドアを開けるときはいなくても出てくると必ずドアの前で待っていた。そしてそのドアの向こうの世界のことを話した。 あるときはジャングルのような密林の中で巨大なクモのような生き物の巣に絡まり危うく殺されるところだった。あるときはドアを開けたとたん水が流れ込んできてあわててドアを閉めた。ドアが閉まると同時に水もなくなっていた。別のドアでは何もない砂漠のような光景だった。しかし歩いているうちに段々体が砂に埋まっていき、あわてて逃げ出した。そこは砂粒のように小さな生き物が大量に住んでいる巣だった。別のときは歩き出すと足を摑まれるように感じ、見ると大地がうごめいていた。逃げ出すと住人は「ここはこいつそのものだ」意味が分からなかったが、よく聞くと巨大な大地のような生き物がいるとのことだった。あるときはなんでもないような緑に覆われた光景に安心してドアの中に入ろうとすると、今までけして止めたことのなかったその家の住人が「ここはだめだ」と言った。「なぜ?何もないじゃないか」というと「目に見えん連中がうようよいる。入れば生きてはいられん」と言った。体が宙に浮いたような、何もない空間にふわふわした霧雲のようなものがあるだけのこともあった。その家の住人はドアの外から「そいつに触れるな」と言った。男は意味がわからなかったが近づいてきた霧雲のようなものに体が触れると徐々に体を包まれていった。何とかもがいて逃れドアの外に出て住人に聞いた。「やつは生きている。触れたものを食う」といった。一見特に変わったことのない荒地のようなところに入ると足元からクモやゲジゲジに似た虫のようなものが大量の湧き出てきた。あまりの気持ち悪さに逃げ出した。あるときはドアの向こうのジャングルのようなところに三人の美女がいた。思わず近付いていった男を誘うように美女たちも近付いてきて男はうっとりした。しかし三人に囲まれたとたん、三人は美女ではなく野獣のような顔に変わって牙をむいて襲ってきた。あわてて逃げだした男は必死になってドアに駆け寄りドアの外へ飛び出した。ドアを閉めると後を追ってはこなかった。男は命からがら逃げ出した。そこにはその家の住人が立っていた。「ここは女に変身する連中がいる」といった「なんでそんな恐ろしい化け物ばかりいるんだ。危うく殺されかけた「やつらも食わねば生きていけない」「そんな…」その繰り返しだった。やがて男は怒り「化け物なんかいらないじゃないか!生かしておく必要なんかないだろ!」「あんな連中はいなくすればいいんだ。ただの化け物じゃないか!「そのためにお前がいる「なに?どういう意味だ?」「やつらを滅ぼすのがかわいそうで生かしておいた。やつらも生き物だ」「この世界は人間の考えた価値観しかない」「お前はやつらを“悪”とするものだ」「だがやつらの世界は人間の価値観とは異なる。俺はあれを“善”とするものだ「しかし必要ないということには変わらないだろう「生きるために知恵も力も使うのは当然だ。異形のものといってもそれはお前たちから見ればにすぎん。お前たちとて他の生き物を食うことには変わりはあるまい。生き物を食らわぬものからすれば、お前たちは残酷な化け物に過ぎん。見た目とて異なるものからすれば異形のものというだろう」「お前たちが生きるために生き物を食らう必要が有ると主張するならば、やつらとて同じことを言うだろう」「この世界はお前たちが想像する以上の命に溢れている」「生きるためにお前たちが知恵を絞り、道具を用いることとやつらの行いはなんら変わりはせん。知恵を用い、力を使うは全て生きるためだ「いやだ。俺はやっぱり納得できない。あんな化け物はいなくしてしまえばいい「闘え「なに?「お前は俺から出た「どういう意味だ?」「時が逆転する「意味がわからない「この世界は二つの力が拮抗してバランスを保っている。一つの力が強くなりすぎないように、反対の力はけしてなくならないようにされている」「その力のバランスが対等になったとき、力の逆転が起こる。“陰”が“陽”となり“陽”が“陰”となるように“神”が“悪魔”となり“悪魔”が“神”となる。俺は今まで“悪魔”だった」「お前の言う“異形のもの”“悪しきものども”を生かし続けてきた。そして時は来た」男は“悪魔”が人間の世界では“悪しきもの”と呼ばれるものたちを解き放ったことを知った。男はその家の住人と戦った。男は敗れた。死ぬ直前悪魔から「俺は今“神”となった。お前はやがて“悪魔”として俺の前に現れるだろう。おれがお前の中の小さな一粒から始まったように、お前は今俺の中の小さな一粒となった」と告げられた。 

     太極マークは“陰”と“陽”のバランスを表している。
“陰”と“陽”,“明”と“闇”,“善”と“悪”対極にあるものどうしが一つの空間でバランスを取り合って存在している。このバランスが崩れたら全てが滅びさる。
しかし全てのものが均等の力で存在し続けても何も変化は起きない。力のバランスは常に動き続けている。その力のバランスが逆転したとき、闇は光となり、光は闇となる。男のいた家は世界の中心“へそ”だった。2008.10.26(SUN)


ALL DOLL(アル)
一見腹話術の人形のように見える不思議な女の子とその女の子と共にいる男(けん)の物語。

男は、女の子の姿をした腹話術の人形のようなものを草原の道端で見つけ拾い上げた。するとその人形のようなものは不思議な言葉ともつかない音を発した。そのときから男はその女の子が人形ではなく生きているということを知った。そして女の子の言うことがわかるようになった。
男の名はけん。
女の子の名は「アル」女の子は男が体に触れているときだけ体を動かし、音を発する。ものを食べたり飲んだりもする。けんが触れていない時は人形のように全く動かないし音も発さない。
 ある日けんが両手にアルと荷物を抱えて、駐車場に止めてあった車に乗るために鍵を差し込もうとしたとき、隣の車から若い女が降りてきてけんにぶつかり鍵を落としてしまった。女性は「ふん」と知らん顔で行ってしまった。アルと荷物を抱え、車の下に落ちた鍵を拾えないけんは困惑した。そこへ別の若い女性が来て、けんの落とした鍵を拾い渡した。けんは礼を言った。アルは2人の女性をじっと見た。翌日の夜若い女性が家へ帰るためバスを待っていると、車に乗ったけんが通りかかり声をかけた。女性は前日鍵を拾ってくれた人だった。けんは女性を家の近くまで送るといい、女性は車に乗った。車にはアルも乗っていた。けんはアルを「人間です」と紹介した。女性は家の近くで礼をいって降りた。
その夜女性の家の近くの公園で、婦女暴行殺人事件が起きた。被害者はバスに乗り家の近くで降り、近道の公園を歩いた女性だった。けんにぶつかり鍵を落とした女性だった。警察の調べで事件の起こった時間に公園の近くにいたけんも疑われた。しかしけんは女性を車で送ったとアリバイを主張し、調べた警察はけんの車に乗った女性から裏づけを取った。犯人は別に逮捕された。
けんの車に乗った女性も普段はバス停から自宅まで近道の公園の中を歩いていた。殺された女性よりもいつも少し早い時間に通っていた。加害者は公園で“女なら誰でも良い”とターゲットを狙っていたとのこと。もしその女性がいつものように公園を通っていたら、その女性が被害者になっていた。

 けんはアルと車であちこち旅をしながら生活していた。ある日観光地のそば屋に行ったとき、お店で働いている女性が「あらっかわいい」とアルににっこり微笑みかけた。アルは喜んで音声を出した。けんは礼を言った。アルは料理が出てくるのが待ちきれず、両手を振って足をばたつかせて奇妙な音声を発した。店の人も客も驚いたが、けんは「人間です」とこともなげに言った。料理が出てくるとけんはアルの口に箸で料理を入れた。すると次の瞬間、料理がアルの口の中から消えた。飲み物も一瞬で消えた。お店で働いている女性は“女の子”なのでケーキをサービスした。けんは再び礼を言った。その店はそれ以来とても繁盛しているという。

 アルを調べるため長年つけ狙い続け、けんから奪い解剖しようとした医者は腹をかっさばかれて死んだ。助手は発狂した。殺したのはけんだったが、一切の記憶はない。

 けんに聞こえるアルの言葉の聞こえ方「自分の頭の中が何もない水面のような状態でそこに水滴が一滴落ちて波紋が広がるような感じ。その波紋がアルが言っている言葉に聞こえる。同じ水だから水滴が落ちた後は自分の声みたいに感じるから、どんな声って言うのは分からないんだけど、言っていることはわかるって感じ」

ALL DOLL(アル)とは、良き願いだけかなえるANGEL DOLL(エル)と悪しき願いだけかなえるDEVIL DOLL(デル)に対し全ての願いをかなえる万能者

けんの心に生じたあらゆる願い事をかなえる者。けんに親切にして婦女暴行犯から助かった女性に対してけんの心には“礼”鍵を落として無視した女に対して“死ねばいいんだ。お前なんて”アルに親切にしてくれた店員の女性に対して“この店もっと繁盛して、あんたが喜ぶように” 医者に対して“てめぇ、ぶっ殺してやる!!”助手“キチガイ!病院に行け!”

アルはこれまでもけん同様に自分に触れた者たちの願いを叶え続けてきた。そして今でも…2008.11.7(FRI)

争乱
(別記)
ある世界でその世界を支配している“悪魔”(大王と呼ばれるもの)が自らの指輪をはずし放り投げ「この指輪を取り我に宣言したものをこの地の支配者とする」と告げた。これを聞いた者たちは我先に指輪を求め争った。ある者は殺し合い指輪を奪い合い、ある者はだまし合い指輪を隠し、ある者はその地に呪いをかけた。欺瞞と陰謀,そして裏切りに満ち溢れた世界に成り果てた。だが全ての者たちが争いに加わったのではなかった。地が荒れ実りが失われ人々が死にゆく世界に絶望しその地を離れた者たちもいた。
大王は何人の祈りにも答えることなくただ黙ってみているだけだった。やがてある一人の若者が敵を倒し指輪を手に入れ大王に「我こそ指輪の持ち主だ」と宣言した。大王は若者の前に姿を現し「あぁ、認めてやる。きさまがこの地の支配者だ」と言った。若者は勝利に酔いしれた。だが大王は「だがきさまはこの地の支配者となってなんとする」と言った。若者はえっと思った。大王は「この地は荒れ果て、何人もいない。実りのなき大地を支配してなんとする」と言うと呆然としている若者の前から去った。

「ニーベルングの指輪」をご存知の方なら似ていると思われるかもしれません。ご存じない方は映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作と思ってください。しかし私は「ニーベルングの指輪」は読んだことはないので内容は詳しく知りません。ラストがこの話のようになっているのか、或いは映画のような展開になっているのかは知りません。
この話は最近何度も出してくれと押されていたので出しました。別記というのはストーリーズに入れる話ではないのですが「真・神話」ではないということでの表記です。
この話に出てくる大王というのは正直言って私もとても怖いと感じている相手です。しかし怖いといっても大物というのは当然大きなことしかやりません。人間一人を地獄に引きずり込むようなことはしません。そんなちっぽけなことをするのは、言ってみればそこいらへんにいるチンピラやごろつきのようなものです。マフィアのドンが道を歩いている人をカツアゲしたりはしないでしょう。悪魔というのも大物は当然それなりの力を持っていますし、それなりのことをやります。2008.11.11(TUE)

望みの木

イスラムのあるところに一人の女性がいました。特にどうという事のない普通の人でした。
その女性があるとき仕事の途中で、仕事仲間に裏切られ道に迷いさ迷い歩きました。そして歩き続けて行った先にはきれいな庭園がありました。女性は中に入りました。疲れていて休ませて欲しいと思って入りました。するとその庭園の奥の屋敷からそれは美しい魔女(ジムニー)が数人の侍女を連れて現れました。女性はジムニーの屋敷だとわかるとあわてました。しかし逃げることも出来ずジムニーの足元のひれ伏し「おお、お優しきジムニーよ、私(わたくし)は旅のもの、疲れ果てた哀れな旅人でござりまする。なにとぞ哀れみを持って下さりますようお願い申し上げます」と言いました。ジムニーは埃まみれの女に哀れみを持ち、休むことを許し屋敷へと招いた。
屋敷の中ではとても盛大な歓迎の宴が行なわれ、女性はとても幸せな日々を過ごしました。ジムニーは庭園を案内し、庭園の植物たちはジムニーが近付くと喜んで自分から話しかけました。『私は目に効くものでございます』『私は腹痛を治しまする』等など。
ジムニーは女性に『私は植物たちの元に暮らすものでござりまする』と言いました。女性は数日滞在した後、家に母親を置いていることを案じ家に帰ることを考えました。そしてジムニーの足元にひれ伏し「お優しきジムニーよ、私はこの地でとても幸せな日々を送ることができました」「しかしながら家には母が居りますゆえ、この地にいつまでもいるわけには参りません。どうぞ私めが元の地へ戻ることをお許しくださいませ」と言い「おお、お優しきジムニーよ、私はこの地を去るに当たりお優しきジムニーのことを忘れることなきことと自らの望むものを頂くことを望みまする」「それゆえ、私の望みしものをお与え下さりますようお願い申し上げまする」と言いました。ジムニーは『なにを望むか』と言い、女性は頭を上げ「私は欲深い人間でござりまする。私が自らの望みのままを申し上げれば、とめどもなくまたアッラーの御心にそむき、お優しきジムニーの心に不快を起こさせる望みを口にしかねません」「それゆえ私に先にいくつの望みが許されるのかと、望んではならぬ望みを教えてくださりませ」ジムニーは『数は300』『望んではならぬ望みは…』と言いました。それを聞き女性は「おお、お優しきジムニーよ、私の望みは“桃の木の幹に300のりんごのつぼみを持ち、アンズの葉を60付け、6のバラのとげをもった、私の持ち運べる大きさと重さの鉢植え”でござります」「そしてそのりんごのつぼみに私の体が直接触れて自らの望みを口に出す或いは心で言い最後に“実現する”と口に出すか、心で言ったならばりんごのつぼみがピンクの桜の花として咲き、望みどおりのことが起り、他者が葉に指先で触れながら望みを口に出していい、指先を離したならば葉が枯れ散り、その望みが叶う。そしてバラのとげは私が望んではならぬ望みを忘れぬように戒めとしておき、私が触れた時、私の中にジムニーのお声が蘇るようにしてくださいませ」「つぼみに他者が触れても効果はなく、葉に私が触れても望みはかなわず、他者がとげに触れてもジムニーのお声が蘇ることはなきようお願いいたします。そして全ての望みがかない終わる或いは私が死んだときには無事にジムニーの元へ戻るようにしてください」と願いました。
女性の最初の願いは『無事家にたどり着くこと』でした。家に帰ってからの女性の生活は特に極端には変りませんでしたが、それでも望みごとはかなえられ続けていました。女性は生活の安定や自らの病の軽減などを望み実現しました。母親は女性が病をよくするため葉に触れて自らの望みを言うことを与えられ病の苦しみから解放されました。その後も数人の人たちが葉に触れて望みがかなうことがありました。葉は人が見ている前で見る見る枯れていき散りました。
そんなある日、その国の評判の悪い大臣が女性の家へと押しかけてきました。母親はもういなくなっていました。そして「お前は何でも願い事がかなう力を持っていると聞く。わが望みをかなえよ」と命じました。女性は大臣の配下の兵に取り囲まれ逃げられませんでした。女性は「大臣の望みは何でございましょうか」と丁寧に聞きました。大臣は「国を乗っ取る事だ!」と言いました。女性はにこやかに「この鉢の木のつぼみに触れて望みを口に出して言ってくださりませ。そうすれば望みはかないまする。ただいつというのは分かりかねまする」と言いました。大臣はいわれたとおりにしました。それから数年経ちました。大臣がまた女性の家に押しかけてきました。「望みがかなわんではないか!!」女性は「いつというのは分かりかねると申し上げました」「いつまでも待てん。わしももう若くはない」「それでは大臣、木の葉に向かって心の中で望みを大声で叫んでくださいませ。ただし他者に聞こえぬように」と言い「いつの時にか望みどおりになられるでしょう」と言いました。それからまた数年経ちました。三度大臣は女性の家に押しかけてきました。「今度という今度は許さんぞ!!」女性は「このとげに触れて望みを口に出して言ってくださりませ。そうすれば7年の先にことは実現するでしょう」と言いました。大臣はいわれたとおりにしました。でも女性は考えていました。“この大臣に国を乗っ取らせる訳には行かない”そのため望みがかなわないようにさせておきました。そして7年の先を信じていた大臣は、寿命で7年経たずに死にました。

女性が寿命が尽きる頃、既に葉は全て枯れ落ち、つぼみは後1つになっていました。女性はベッドに横たわったまま、最後まで残し続けたつぼみに静かに触れ“ジムニーの元に安らかに戻り、私の感謝の言葉を伝えるように。実現する”と念じました。つぼみは花開き女性はその鉢の木が砕け散り風と共に去っていくのを見つめると静かに目を閉じ安らかな笑顔を浮かべて最期のときを迎えました。2009.1.9(FRI)


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